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ワールドカップ中継を見ていると、試合前に両国の国家が流れ選手が皆歌っています。歌っているのは流れるのですが、どんな歌なのか全くわかりません。いつも気になって試合に集中できない(嘘)ので各国の国家がどのようなものなのか把握するついでに残しておきます。
訳文は、原文からCodex5.5が日本語にしたものです。既存の日本語訳は使わないようにという指示をしています。そのほかの解釈などもCodex5.5によるものです。
どの国歌も歌詞作者の没年や成立時期から著作権保護期間は過ぎているとの判断でしたが、記事では長い国歌の全文訳は避け、試合前に通常歌われる部分を中心に扱うようにしています。
もう試合直前で急いでいるあなた向けのまとめ
日本は長寿と永続を祝う短い歌です。
スウェーデンは北の自然と自由を歌います。
オランダは独立戦争の中で、信仰、忠誠、抵抗を同時に抱えています。
チュニジアは祖国防衛と自由のために立ち上がる歌です。
ブラジルは独立と国土の壮大さを重ねます。
ノルウェーは厳しい自然、家、歴史、神への感謝を歌います。
イングランドは王を守るよう神に祈ります。
アルゼンチンは鎖からの解放と自由を歌います。
フランスは革命期の祖国防衛を、武装の呼びかけとして歌います。
記事の対象の国と理由
今回のW杯では日本は、スウェーデン、オランダ、チュニジアというだいぶ強めの国と一緒のグループリーグF組でした。1勝2分けの2位でグループリーグを勝ち上がりました。決勝トーナメントで日本が対戦するの相手を、ラウンド32はブラジル、ラウンド16はノルウェー、ラウンド8はイングランド、準決勝はアルゼンチン、決勝はフランスと想定しています。
つまり、未決のカードは2026年06月11日発表のFIFAランキングを元に上位が進出する想定です。日本はすべての試合で勝利する想定です :-)
グループリーグの4か国
日本(FIFAランキング17位): 「君が代」
「君が代」は、長寿と永続を祝う賀歌です。
国歌としては、「君が代」を日本のこととして読むのが素直です。
「君が代」の仮訳
あなたの代が、千年も八千年も続きますように。
小さな石が大きな岩となり、そこに苔が生すほどの長い時まで。
歌詞表面には、戦争、敵、血、勝利といった言葉は出てきません。
このあとに見る国歌の中には、独立、革命、祖国防衛を強く歌うものもあります。
それらと比べると、「君が代」は短く、静かに長い時間を願う歌です。
スウェーデン(FIFAランキング36位): 「Du gamla, du fria」
スウェーデンの「Du gamla, du fria」は、題名を直訳すると「古き、自由なるものよ」に近い言い方です。
一般に歌われる部分では、古く自由な北の国、山、空、緑の野、過去の記憶が歌われます。
「Du gamla, du fria」の仮訳
古く、自由で、山高い北の国よ。
静かで、喜びに満ちた美しい国よ。
私は地上でもっとも親しい土地に挨拶する。
あなたの太陽、空、緑の野に。
あなたは古い大いなる日の記憶の上に立っている。
かつて、あなたの名は誉れとともに世界へ広がった。
あなたは今も昔のあなたであり、これからもそうあり続けると私は知っている。
私は北に生き、北で死にたい。
この歌も、通常歌われる部分では敵や血を歌いません。
中心にあるのは、北の風土と、古くから続く国への愛着です。
国を「戦って勝ち取るもの」として描くより、そこに住み、そこを思い、そこに戻っていく場所として描いているように読めます。
試合前に聴くと、勇ましさよりも、風景を思う歌として聞こえます。
オランダ(FIFAランキング7位): 「Wilhelmus」
オランダの「Wilhelmus」は、16世紀の独立戦争、つまり八十年戦争の時代を背景にした国歌です。
歌詞はオランダ独立運動の指導者ウィレム1世の視点で書かれています。
「Wilhelmus」の仮訳
ナッサウのウィレムである私は、低地地方の血筋を引く。
祖国に対して、死ぬまで忠実であり続ける。
オラニエ公として、私は自由で恐れない。
スペイン王を、私はつねに敬ってきた。
通常歌われる第1節だけでも、単純な独立歌としては読みにくい構造があります。
祖国への忠誠があり、自由で恐れないという自己像があり、その一方でスペイン王への敬意も出てきます。
第1節は、祖国への忠誠とスペイン王への敬意を同じ節に置いています。
近世ヨーロッパの政治秩序では、反乱、忠誠、信仰、統治者への義務が単純に切り分けられません。
第6節には、神を盾とし、圧政を追い払いたいという趣旨の祈りが出てきます。
全体としては、単純な勝利の歌ではなく、信仰と政治的抵抗が重なった歌です。
チュニジア(FIFAランキング59位): 「Humat al-Hima」
チュニジアの「Humat al-Hima」は、題名からして「祖国の守り手たち」という意味です。
歌詞には、祖国の防衛、血、死、自由、鎖といった言葉がはっきり出てきます。
「Humat al-Hima」の仮訳
祖国の守り手たちよ、集まれ。
この時代の栄光へ向かって進め。
私たちの血は、脈の中で叫んでいる。
私たちは死ぬ。
祖国は生きる。
人々がいつの日か生を望むなら、運命は必ず応えなければならない。
夜は必ず明け、鎖は必ず砕ける。
この国歌は、グループリーグの4か国の中ではもっとも闘争の語彙がはっきりしています。
ここで前に出ているのは、攻め込むための戦いではなく、外からの支配や不自由に対して祖国の自由を守るという文脈です。
試合前に聴くと、曲の勢いだけでなく、歌詞にも「祖国を守る」という姿勢が強く入っていることが分かります。
ラウンド32想定:ブラジル
ブラジル(FIFAランキング5位): 「Hino Nacional Brasileiro」
ブラジル国歌は、独立の場面と祖国の自然を大きく歌う国歌です。
冒頭では、イピランガの岸辺で独立の叫びが響いたという場面が置かれます。
「Hino Nacional Brasileiro」の仮訳
イピランガの穏やかな岸辺は、英雄的な民の高らかな叫びを聞いた。
その時、自由の太陽は祖国の空に強い光を放った。
平等の約束を力強い腕で勝ち取ったのなら、
自由よ、私たちはあなたの胸の中で死そのものにも立ち向かう。
愛する祖国、偶像のように尊い祖国よ、万歳。
ブラジルよ、強い夢、鮮やかな光があなたの空から大地へ降りる。
新世界の巨人よ、あなたは美しく、強く、恐れない。
あなたの未来は、その大きさにふさわしい。
歌詞には、自由、平等、独立、死への覚悟が出てきます。
その一方で、自然の描写も大きな割合を占めます。
空、大地、光、巨人といった語があり、国土を大きく美しいものとして描いています。
チュニジアやフランスのように敵を前面に出すというより、独立の記憶と国土の壮大さを重ねている歌です。
ラウンド16想定:ノルウェー
ノルウェー(FIFAランキング22位): 「Ja, vi elsker dette landet」
ノルウェーの「Ja, vi elsker dette landet」は、「そうだ、私たちはこの国を愛している」という題名です。
歌詞は、国土の姿、家々、父母、サガの記憶、神への感謝を歌います。
「Ja, vi elsker dette landet」の仮訳
そうだ、私たちはこの国を愛している。
海の上に、刻まれ、風雨にさらされながら立ち上がる国を。
千の家を持つこの国を愛し、父と母を思う。
そして、この大地に夢を降ろすサガの夜を思う。
家にいる者も、小屋にいる者も、ノルウェーの人よ、偉大な神に感謝せよ。
暗く見えた時にも、神はこの国を守ろうとした。
父たちが戦い、母たちが泣いたことを、主は静かに導き、私たちの権利へとつなげた。
歌詞全体には、戦いの記憶も出てきます。
しかし、中心にあるのは敵を倒すことではなく、厳しい自然の中にある国土、家、親、歴史、神の加護です。
スウェーデン国歌と同じく、北の国土への愛着が強く出ています。
ただし、ノルウェーの方が、歴史の苦難と信仰の言葉が前に出ます。
ラウンド8想定:イングランド
イングランド(FIFAランキング4位): 「God Save the King」
イングランド代表は、英国国歌である「God Save the King」を使います。
歌詞の中心は、国土や国民ではなく、王の長寿と統治を神に願うことです。
「God Save the King」の仮訳
神よ、慈しみ深い王を守りたまえ。
気高い王が長く生きますように。
神よ、王を守りたまえ。
王に勝利と幸福と栄光を与え、長く私たちを治めさせたまえ。
神よ、王を守りたまえ。
この歌は、近代的な国民国家を語る歌というより、王への祈りです。
「国民が自由を勝ち取る」「祖国を守る」「国土の自然を讃える」という方向とは別の歌です。
日本の「君が代」と並べて見ると、どちらも君主制と結びついた短い歌です。
ただし、「君が代」が長寿と永続の祝福として読めるのに対し、「God Save the King」は神が王を守り、王が統治することを願う祈りとしてはっきり書かれています。
準決勝想定:アルゼンチン
アルゼンチン(FIFAランキング1位): 「Himno Nacional Argentino」
アルゼンチン国歌は、現在の式典では短縮された形で歌われます。
歌詞には、自由、鎖からの解放、平等、勝ち取った栄光が出てきます。
「Himno Nacional Argentino」の仮訳
聞け、死すべき者たちよ、聖なる叫びを。
自由、自由、自由。
壊れた鎖の音を聞け。
高貴な平等が王座につくのを見よ。
私たちが勝ち取った月桂冠が永遠にありますように。
栄光をもって生きよう。
そうでなければ、栄光のうちに死ぬことを誓おう。
現行で歌われる部分だけでも、独立歌としての熱ははっきり残っています。
「鎖が壊れる」「自由を叫ぶ」「平等が王座につく」という表現は、支配からの解放を強く意識しています。
現在歌われない部分まで見ると、スペイン支配からの解放、戦い、勝利を示す語が増えます。
式典で聞く短い版にも、その独立歌としての性格が残っています。
決勝想定:フランス
フランス(FIFAランキング2位): 「La Marseillaise」
フランスの「La Marseillaise」は、革命期の戦争歌です。
いま国歌として歌われるときも、歌詞には革命、祖国防衛、圧政、敵、血、武装がそのまま残っています。
「La Marseillaise」の仮訳
行こう、祖国の子らよ。
栄光の日が来た。
圧政は私たちに向かって、血に染まった旗を掲げている。
野にいる荒々しい兵士たちのうなりが聞こえるか。
彼らは私たちの腕の中にまで来て、子や伴侶を殺そうとしている。
武器を取れ、市民たちよ。
隊列を組め。
進もう、進もう。
汚れた血が、私たちの畑を潤すまで。
この歌は、比喩としての勇ましさではなく、市民が武器を取ることを具体的に呼びかけています。
敵が来る、子や伴侶が殺される、だから市民は武器を取る、という構造です。
ただし、これも「フランス人は好戦的だ」という話ではありません。
この歌が生まれたのは、革命後のフランスが周辺国との戦争に向かっていた時代です。
歌詞は、その時代の切迫した祖国防衛の言葉を国歌として今も残しているものです。
Codexが参考にした資料
日本:「君が代」については、JapanGov の National Flag and Anthem を参照した
スウェーデン:「Du gamla, du fria」については、歌詞作者 Richard Dybeck と通常歌われる歌詞を確認した
オランダ:「Wilhelmus」については、オランダ王室の National anthem と Music, lyrics and customs を参照した。
チュニジア:「Humat al-Hima」については、歌詞作者 Mustafa Sadiq al-Rafi'i と Aboul-Qacem Echebbi、現在の国歌としての扱いを確認した
ブラジル:「Hino Nacional Brasileiro」については、ブラジルの国旗国歌法にあたる Lei No. 5.700 と、歌詞作者 Joaquim Osório Duque-Estrada の没年を確認した
ノルウェー:「Ja, vi elsker dette landet」については、Stortinget の国歌法関連資料と、歌詞作者 Bjørnstjerne Bjørnson の没年を確認した
イングランド:「God Save the King」については、英国王室の National Anthem を参照した
アルゼンチン:「Himno Nacional Argentino」については、現在歌われる短縮版と、歌詞作者 Vicente López y Planes の没年を確認した
フランス:「La Marseillaise」については、フランス大統領府の La Marseillaise de Rouget de Lisle を参照した