朝、由比ガ浜を出るときには、日の入りのころにようやく砂浜へ滑り込むような一日を思い描いていた。ところが実際には、まだ夕方にもなりきらない時間に着いてしまった。空は少し鈍い色をしていたけれど、時間だけは妙に余っていた。
千里浜に早く着きすぎた
去年の夏に免許を取って、あれこれツーリング動画を見るようになってから、SSTRのことを知った。面白そうだなと思ったのを覚えている。申し込み開始は2月の朝で、まだ冬の気配が濃かった。開始時刻を待ちながらパソコンの前に座っていたのだけれど、あのときの感じは、チケットを取るというより、何かの出走権をもらいに行く感じに近かった。
初参加なのだから、安全に、無事に、少し早めに着くくらいでちょうどいい。そう頭では分かっていたのだけれど、気持ちは少しだけ前のめりだった。18時ごろから雨の予報も出ていて、日の入りまで千里浜にいても、たぶん夕日は見えない。それなら早めにゴールして、その夜の宿がある氷見へ向かったほうが良い。そう考えていた。
それに加えて、今回は裏の目的があった。今年のはじめ、千葉を走ったときに洲崎神社で御朱印帳を手に入れてしまってから、一宮を少しずつ回っている。今回も通り道の一宮で御朱印をいただくつもりでいて、当日は上越の居多神社と、羽咋の気多大社を予定に入れていた。特に気多大社をその日のうちに回れるかどうかで、帰りの三日間の組み立てがだいぶ変わるのが分かっていたので、私は思った以上に急いでいたのだと思う。
千里浜に早く着いてしまった理由は、たぶんそういう細かい欲張りがいくつも重なっていたからだ。初めてのSSTRを走り切りたい。雨にはあまり当たりたくない。御朱印もいただきたい。どれも小さな理由だけれど、効果も積み重なる。
ゴールしたあと、千里浜で少しだけ写真を撮った。砂浜にバイクを止めると、ようやく本当に着いたのだという感じが出てくる。海岸線から太陽を追いかけてきた一日の終わりが、最後にまた海で閉じるのは、よくできていると思う。
ただ、その日はゆっくり感傷に浸る空気でもなかった。雨雲がこちらへ来る前に、私は千里浜を離れて氷見へ向かった。少し名残惜しかったけれど、初参加の日の判断としてはあれでよかったと思う。見えない夕日への小さな期待より、雨がやんでいるうちに宿へ着くほうが、その夜は正しかった。